香料屋さんが綴る、「香り屋日記」香りに関わる富士香料化工のスタッフが、日々感じた事を連載していきます。
2025年10月07日
万博記
少し遠い先日の話になる。
家族がこちらに遊びに来るついでに、万博に行きたいと言い出したのが事の始まりであった。ついでに白浜の方へ行きたいとも言い出された。旅程が忙しない事になりそうだと内心頭を抱えたのだが、白浜への旅程は割愛とする。
会場内に立ち入ると暑さと熱気でジリジリ炙られるようだったが、日差しと海風を受けて蠢いている建物、木組みの巨大な櫓、赤と青の人形に一列に並ぶ人々、突然の森、それらを歩く人の間をすり抜け練り歩いた。
ここはテーマパークというより、広場にそれぞれが催しとして集まっているのだなと思った。
今回の大きな目的であった住友館に近づくと、木材か土の匂いがし始めていたような気がする。膝下に近づけば規模感に圧倒された。その日陰でも熱波を感じるため早いところ中に入れてくれ、と思っていた矢先に案内が始まった。
中に入り少し進むとランタンを手渡された。
これがこのパビリオンの目玉らしく、なにやら案内をしてくれるものらしい。説明が始まるとそれらが一斉に光っては囀る様が非常に印象に残った。
テーマとして森の成り立ちを模しているらしく、自分の足で歩き見て回るらしい。室内のはずなのだが、遠雷と降雨の光景や靄と霧の潤った空気感で涼しげだった。
ランタンを特定の場所に乗せると、仕掛けが動くようだ。森に生息しているらしい梟や狐が動いたり、キノコが虹色に光りながら音楽を鳴らしたりと中々興味深かった。
時折ランタンが囀るところで足を止め、辺りを探索していると見どころがいくらでも見つかった。おそらくまだ半分も回れておらず、探索時間があと三十分くらい欲しいと後ろ髪を強く引かれた。
その後劇場のような場所に通され、映像などを見る催しもあった。それらを見てなんだかすごかったねと感想を言い合いながら、他の場も満喫して帰路に着いた。
次回があればもっと旅程に余裕を持たせようと決意しながら、帰りの電車に揺られたのだった。
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